兄弟・姉妹の問題

兄弟間で遺産相続トラブルが起こったら…有効な対処法と相続についての基本

相続トラブルはどんな家庭でも起こり得る

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人を変える魔力を持つ「お金」という存在

遺産相続トラブルという言葉を別の世界の問題として捉えている方は少なくないでしょう。

「数億円、数十億円というお金が動かなければトラブルになど発展するはずがない」「ウチの兄弟は仲が良いからそんな問題は起こらない」などと考えてはいませんか?それは大きな間違いであり、実際には1,000万円以下という金額だとしても遺産相続トラブルに発展しているケースは非常に多く、被相続人が亡くなる当日まで仲良くしていた兄弟と絶縁状態になるということも珍しくありません。

1,000万円といえば家や土地を相続しただけでも簡単に超過してしまう金額ですし、貯金や有価証券等をかき集めると意外にもすぐに到達してしまう金額でもあります。

そのような金額でもトラブルになるのですから、誰にとっても決して他人事ではなく、いつ自分の身に相続トラブルが降りかかってきたとしても何も不思議ではありません。

誰が遺産を相続するのか

遺産を相続できる人物は法律で厳格に定められています。まず配偶者、つまり亡くなった方の夫や妻は、生存していれば必ず相続人として認められます。

次に第一順位として相続権が与えられるのが亡くなった方の子供で、子供がいなかったり、既に亡くなっている場合には被相続人の親に相続権が移ります。そしてその親も亡くなっていると、相続権が兄弟へと移ることになります。

何を隠そう、私が以前巻き込まれた遺産相続トラブルもまさしくこのケースでした。数年前のある日、兄が不動産物件と貯金500万円ほどを遺して亡くなりました。兄は生涯独身を貫いており子供もおらず、両親も死亡していたため、三人兄弟の弟である次男と三男である私に相続権が発生し、争いに至ったのでした。

遺産は誰がいくら受け取るのか

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法定相続分を知っておこう

遺産には法定相続分という決まりがあります。

つまり、法律によって誰がいくら遺産を受け取れるのかのベースが定められているのです。相続人が兄弟だけというケースにおいては、それぞれに対して平等に遺産が分けわれることになります。

相続人が二人だけの場合には1/2ずつ、三人の場合には1/3ずつ、四人の場合には1/4ずつと均等に分けていくという考え方が法定相続分です。

遺言書と遺留分

亡くなった方が遺言書を残していると、法定相続分が覆る可能性があります。

つまり遺言書に「Aが75%、Bが25%を受け取ることにする」と記載されていたとすれば、その決定に従わざるを得ません。不公平に感じるかもしれませんが、亡くなった方の意思が最重要視される制度である以上は仕方がないことでもあるのです。ただし、兄弟間で話し合いを進めることによって遺言書の存在を無視することも可能です。

「兄弟で揉めたくないから、やっぱり半々に分けよう」と兄弟で取り決めてしまえば、遺言書の通りに遺産を分ける必要はありません。

しかしこの遺言書の割合に納得できず、かつ兄弟と話し合っても半々に分けるという案を受け入れてくれない場合にはどうなるのでしょうか。

このケースでカギを握るのは「遺留分」という制度の存在です。遺留分とは、相続人が最低限保証される遺産のことを指します。この存在によって、例えば「全額を寄付して、配偶者や子供には1円も渡さない」といった無茶な主張は否定され、法律で定められた割合の金額が相続人に渡ることになります。

ところが、この遺留分で保証される割合が、兄弟同士という関係性においては一切ありません。

もしも「次男に100%を渡し、三男には1円も渡さない」と遺言書に書かれていればそれを認めるしかなく、仮に「兄弟には1円も渡さず全額を寄付する」と書かれていれば、その兄弟が受け取れる遺産は0円です。このことも兄弟間で遺産相続トラブルが多発する原因の一つになっています。

特別受益や寄与分って何?

兄弟間での遺産相続にあたっては、「特別受益」と「寄与分」という二つの制度の存在を覚えておきましょう。

特別受益とは、被相続人が生前に特定の相続人に対して渡していた金銭がある場合には、その金額を相続する金額から差し引くという制度です。もしも兄弟のどちらかが、亡くなった人物から家や土地を購入するための資金や開業資金、結婚資金などでお金を貰っていた場合には、その金額を全て相続するお金から差し引かなければならないのです。

では、特別受益に生命保険の金額は含まれるのでしょうか。私が過去に経験したトラブルでは、亡くなった長男の生命保険の受取人が私になっており、保険金がそのまま私の口座に振り込まれました。次男はこれに不満を示し「特別受益である」との主張を行いましたが、後に行うことになる調停ではこの主張が退けられました。

しかし生命保険が特別受益として認められたという判例も残されているため、ケースバイケースと言えるでしょう。

次に、寄与分もこのケースでは分割すべき金額を左右するキーポイントになります。寄与分とは相続人が被相続人に対して行った寄与、つまり特別な貢献を金銭に換算しようという目的で作られた制度です。

例えば、死亡に直結する病気の治療費や手術費を全て相続人のうちのいずれかが支払ったという場合や、長年に渡る闘病をすぐ近くで支えてきたという相続人がいる場合には、その相続人に対して寄与分が発生します。ただし寄与分の換算方法は曖昧であるため、兄弟間の話し合いでまとまらない場合には、調停や裁判を通じて第三者が寄与分を決定することになります。

遺産相続トラブルが実際に起きてしまったら

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まずは最大限に努力し、兄弟間で話し合うことが先決

不幸にも兄弟間での遺産相続トラブルが現実のものになってしまったら、いくら理不尽な主張をされたとしても、まずは冷静に話し合う努力をしなければなりません。

相続トラブルは様々な事情や思惑が複雑に絡み合うものですから、感情的にならずに話し合いを進めるということは極めて困難ですが、なぜ相手がその主張を行っているのかを落ち着いて考える時間も必要です。

こういった交渉の席に着く際に決して行ってはならないのが、相続放棄の手続きを取るということです。特に少額の遺産相続というケースや、争っている相手からの圧力が強いというケースでは、気の迷いや怒りから「自分はいらない」「そんなに欲しいならお前に全部やる」と相続放棄を宣言してしまう方も多いのですが、後々になってから沸々と怒りが沸く場合が大半であり、決して有効な解決策にはなりません。

弁護士に相談して代理人になってもらう

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話し合いがまとまらなければ、弁護士に相談を持ち掛けた上で正式に着任の依頼を行い、それ以降の相続問題は全てお互いの弁護士に任せましょう。

弁護士が間に入れば、それ以降は兄弟と直接顔を合わせて話し合うことも、電話やメールを通じてやり取りを行う必要も一切無くなります。

私たち兄弟で争いが発生したときには、当初こそ揉めに揉めて絶縁状態にまで至りましたが、弁護士に任せて以降は自分が直接相手の意見を聞く機会が無くなったため、結果として怒りが収まり、相続を終えた現在では少しずつ関係を修復できています。

また、難しい法律の用語を調べて勉強しなければならないことも私にとって大きなストレスでした。

今でこそ特別受益や寄与分について簡単に人に説明できるまでになりましたが、相続を経験するまではそのような知識が一切無かったのです。

相続を進める上では、さらに他の細かな決まりについても覚えていかなければならず、難しい書類にも自ら書き込まなければなりませんでしたから、弁護士に依頼してそのような手間が無くなったことも大きなプラスだったのです。

自分が相続トラブルを残さないためにすべきこと

自分が被相続人になるときが来る

人は誰もがいつか必ず死にます。自分が相続人になって遺産を引き継ぐことがあれば、将来的には反対に自分が被相続人となって、誰かに遺産を譲る日がやって来るのです。

自らが遺産相続のトラブルの元にならぬようにするためには、遺言書を作成しておくことが最良のトラブル回避方法となります。兄弟全員が平等に分けてほしいという希望を伝え、仲良く協力して暮らしてほしいという一文を添えれば、それを破ろうと考える人物はさほど多くないでしょう。

特に遺産に不動産が含まれる場合には、その行先について明確にしておかなければなりません。生きているうちから将来のことを見通して、相続が発生した場合には誰が家を継ぐのかを兄弟全員が立ち会っている場でハッキリと決めておくことがベストです。

どうしても話がまとまらない場合には、売却して売買益を全て均等に分けてほしいという旨を遺言書に記載して残しておくと良いでしょう。

終わりに

私が当初兄から受けた遺産分割の要求は、「不動産の無償譲渡」「生命保険を全額特別受益にすること」「寄与分を認めること」など納得ができないものばかりでした。

結局不動産は手放して売却することになりましたが、弁護士を介して調停に臨んだ結果、私が望んでいた通り、特別受益や寄与分を一切認めることなく、その上で全ての財産を半分に分割するという条件で和解が成立しました。

この経験則から申し上げても、兄弟間で遺産相続がトラブルに発展した場合には、すぐに弁護士に相談を持ち掛けて依頼することこそが紛争解決の特効薬と断言できます。

しかしながら和解までには弁護士に依頼してから一年半以上を要しており、その間はずっと心理的な負担を感じ続けていたこともまた事実です。

起きてしまったことは仕方がありませんが、自分自身がそのような火種を将来に残すことだけはしてはならないと痛感させられた出来事でもあり、現在は来たるべき日に備えて、遺言書の準備等を進めている真っ只中です。

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