夫婦生活

夫婦に関する義務と権利

結婚に向けて準備を進めているカップルは、希望に胸を膨らませていることでしょう。これまで付き合ってきた人と家庭を築くことになり、さらには将来子供を持つことができるとあって、結婚は多くの人に喜びをもたらします。

しかし当然のことながら、結婚することで夫婦の間には守らなければならない義務や権利が発生します。これらのことを事前にしっかりと理解していなければ、結婚後に「こんなはずではなかった」という状況に直面してしまうかもしれません。そのため結婚に伴う義務と権利について事前に考慮しておくことは、非常に重要なのです。

これらは決して難しいものではありません。むしろ結婚生活を送る上での一般常識といえるものばかりです。では結婚することによって生じる義務と権利にはどのようなものがあるのか、そのいくつかをご紹介したいと思います。

夫婦に生じる義務

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ではまず結婚によってどのような義務が夫婦双方に生じるかを見ていきましょう。

姓が同じになる

日本の法律では、夫婦がそれぞれ別の姓を名乗ることは認められていません。そのため結婚後のカップルは夫、もしくは妻の姓を名乗ることになります。

同居義務

当たり前のことかもしれませんが、結婚後の夫婦には一緒に住む義務が課せられます。もちろん仕事の都合や、どちらかの親が突然、病気や怪我などでお世話が必要となり、一時的に親元に帰らなければならないといった特別な状況が生じることがあります。このようなケースでは夫婦双方の話し合いのもと、一時的な別居が許可されるのが一般的です。

しかし夫婦のどちらかが理由もなく別居することを望む場合、これは同居義務の拒否とみなされます。このような場合は「悪意の遺棄」という法律で定められた離婚事由に該当することになります。ちなみに別居が許されるのは配偶者である夫の扶養義務の拒否や暴力など、生活を困難にしたり、配偶者に心的ストレスを与える場合、または命に関わるような状況に直面する可能性がある場合などです。

扶養義務

上記でも少し触れましたが、結婚後の夫には家族に必要なものを備えるという扶養義務が生じます。子供が生まれた場合は自分と妻だけではなく、子供の養育費を稼ぐ必要があります。そのためこの点もしっかりと明記しておく必要があります。

財産共有義務

結婚前に夫と妻がそれぞれ得た財産は特有財産となり、それぞれが管理することができます。つまり結婚後もそのような財産は夫婦で共有するのではなく、個々で所有することが許されているのです。しかし結婚後に夫と妻が得た財産は全て二人の共有財産となります。このような義務が生じるのは、当然のことといえます。

多くの場合、結婚後の妻は専業主婦となります。つまりお金を得るために社会で働くことはできないものの、毎日家族のために忙しく家事をこなすのです。それとは対照的に夫は外で働き、給料を手にします。このような状況を考慮し、夫婦の間では財産共有の義務が生じるわけです。ちなみにどちらの所有財産かがはっきりしないものに関しても、共有財産として扱われることになります。

協力義務

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夫婦は働いて家族の必要なものを購入するための費用を稼ぐ夫と、家庭を守る妻とで構成されているわけですが、夫はただお金を稼ぐために働いていればそれでよいというわけではありません。主婦に休暇はありませんし、場合によっては寝るまで働かなければならないこともあります。こうしたことを考えると、主婦業というのは決して簡単な仕事ではないことが理解できます。そのため妻は夫の協力を求めるのが一般的です。

食事後の皿洗いを行ったり、休日に部屋の掃除を行うなど、家事の一端を夫が担うことができます。このように生活上の物事を協力し合って行う義務が、結婚した夫婦には生じてくるのです。

貞操義務

これは法律によって定められているものではありません。そのためこの義務を無視しても、直接罰せられることはありません。しかしこれは一般常識として守るべき事柄です。家族生活を幸福なものとするためには、慎重に考慮しなければならない義務の一つです。

子供に対する義務

子供が誕生した場合に生じる義務があります。まず子供の姓は親と同じである必要があります。

また未成年に達しない子供に対しては監護義務が生じます。親権者である親は子供を監護する義務を負うことになり、子供が大人になるまでしっかりと面倒を見る必要があります。素行に対する教育はもちろんのこと、子供の成長に伴って生じる費用を負担することなどが、この監護義務に相当します。

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夫婦に生じる権利

次に結婚後の夫婦が考慮するべき権利について見ていきたいと思います。これらは主に財産分与に関係するものです。

財産分与請求権

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あまり考えたくないことかもしれませんが、何らかの理由で結婚生活に終止符が打たれ、離婚に至るケースも少なくありません。そのようなときに必ずといっていいほど考慮されるのが、財産分与請求権です。これは離婚するときに所有している財産が少ない方の配偶者が、多い方の配偶者にそのいくらかの分与を請求できる権利です。これによって離婚後の生活にいくらかの安定がもたらされます。

相続権

何らかの理由で配偶者が亡くなった場合、生存している配偶者には亡くなった配偶者の財産を相続する権利があります。しかし全ての財産を相続できるわけではありません。法律に従い、状況に応じて2分の1から4分の3までの範囲内で、残された財産を受け継ぐことになります。

離婚後の決定

結婚に伴う義務の不履行などがきっかけで離婚に至ることがあります。そのような場合、上記で取り上げた義務に基づいて夫婦間での話し合いがなされ、今後についていくつかのことを決定しなければなりません。

たとえば結婚後は夫婦とも同じ姓を名乗る必要がありましたが、離婚後の姓はどうするのかという点や、同居義務が解消された後に夫婦がそれぞれどこに住むべきかのかといったことなどを決定しなければなりません。

また扶助義務や財産分与請求権を考慮し、財産分与に関する話し合いもなされます。加えて貞操義務が不履行だった場合、一方の配偶者に心的ストレスを与えることになります。このような場合は慰謝料という形で償いがなされます。加えて子供がいる場合、扶養義務を誰が引き継ぐのか、親権は夫と妻のどちらが持つのかといった点も考慮しなければなりません。

このように財産などを分け与えることで解決されるものもあれば、結婚によって生じた義務を夫婦のどちらかが引き継がなければならないものもあるのです。

義務は離婚理由にもなりうる

結婚に伴う義務は、良心や常識に基づいて物事を考えることができる人であれば、容易に履行することができます。しかしそうでない場合、たとえ法律で裁かれることがなくても、家庭に問題を生じさせることになります。

また義務の不履行が著しい場合、それは離婚理由となることもあります。たとえば扶養義務を怠り、家族に必要なものを備えない夫がいる場合、それは妻にとっては大きな問題となるはずです。また小さな子供がいる母親は外で働くことができないために、生活していくことが困難な状況に陥ってしまいます。このようなケースでは妻と子供の命が関わってくるために、状況によっては離婚が認められます。

また貞操義務に関しても同様で、この義務を怠った配偶者は法律で裁かれることはありません。しかしもう一方の配偶者に大きな悲しみをもたらし、信頼関係を失う結果に至ります。このような状況も離婚できる理由とみなされるために、結婚に伴う義務を軽く見ることがあってはならないのです。

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