もしかして虐待かも?ご近所のしつけ方法に疑問をもったときの対処法
夫の転勤にともない新しいエリアに引っ越してきたとき、もしくはずっと住んでいるマンションに新しいご近所さんがお引っ越ししてきたとき、近隣の生活音や声はとくに気になるものです。
とくに最近社会問題化されているのが、実の両親による幼い子どもに対する虐待行動。
一緒のエリアに住んでいるご近所さんから、虐待っぽい行為や言動が見られたら、ひとりの大人としてどう対処していけば良いのでしょうか。
具体的なアドバイスとともに、ご紹介していきます。
目次
虐待認知度はじんわり増えている傾向に…
虐待ってテレビの中のニュースだけの話では?いえいえ、日本では虐待は増えているのも事実。
平成28年度に厚生労働省が発表したデータによると、全国の児童相談所が虐待と認めたケースは実に12万件にものぼっています。
平成17年度が全国で3万超であるのに対して、約9万近くも件数が伸びているのです。
これは虐待そのものが増えているのではなく、世間が虐待に対して敏感になり「虐待かも?」と疑ったときに、児童相談所や警察にスムーズに連絡がいっている証拠だといわれています。
また厚生労働省では「警察や学校との連携が以前に比べてスムーズになっていること」「肉体的ではなく心理的に受ける虐待が増えていること」を認知度アップの理由と答えています。
ひと昔前までは虐待=殴る・顔面をけるなどの体罰が一般的でしたが、最近では子どもが受ける「メンタル的な虐待」も立派なNG行為とみなされているのです。
メンタル的な虐待のマニュアルには、兄弟と比べる・兄弟と差をつける、子どもの前でパートナーに暴力をふるうことも、立派な虐待と位置付けています。
虐待は遠い世界の物語ではなく、どこの家庭でも起こりうる問題になっているのです。
ココロが痛い虐待事件は、定期的に発生している
虐待問題で記憶に新しいのは、2018年目黒区で5歳の女の子が両親によって虐待され幼い命を失った事件です。虐待を受けた女の子とお父さんは実際に血は繋がっていず、いわゆる連れ子と義理の父という関係性が成り立っていたようです。
母による直接的な暴行はなかったものの繰り返されるえげつない父の虐待を、いわゆる「見て見ぬふりしていた」状態が指摘され、結果的には義父と母両方が保護責任者遺棄致死罪で逮捕される結果となりました。
発見されたときの女の子は5歳の女児とは思えないくらいやせ細っていたそうで、最後は食べものを飲みこめない・トイレに自力で行けないくらい衰弱していたそうです。
義理の父による虐待が日常化されていたといわれ「息が切れるまで運動すること・朝4時に起きて平仮名の勉強をおこなうこと」が義務づけられていたそうです。守れなかった場合は冷たい水を浴びせられたり、ベランダにはだしのまま放置させられたり、握りこぶしで頬を殴るなどの仕打ちを与えていたという義理の父親。ひとりの大人として、絶対的に許せるものではありません。
こうした虐待のニュースのほかにも、栃木で32歳の母親が7歳の息子の首を絞めてしまった事件、東京で37歳の母親が4歳の娘に熱したフライパンでやけどをさせた事件などがあり、父母性別を問わないあり得ない虐待が続いている状況があります。
目黒の事件では児童相談所のスタッフが何度もアパートや学校説明会を訪れ、虐待されている女の子との接触を試みたようですが、無残にも叶えられなかったということ。事件が発覚したあと、女の子の手書きのメモが発見され、世間の大きな注目を集めました。
このようなニュースが出ると、誰しもが「救えなかったのか?」と近所や周囲を責めます。虐待はスルーすべき案件なのではなく「絶対に防がなくてはならないモノ」なのです。
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もしご近所で「虐待疑惑」があったら、どう動く?
幼い命が失われる可能性もある、放っては置けない虐待。もし虐待疑惑の家族がご近所にいたら、どう動けば良いのでしょうか。
虐待を受けている子どもには、外見と内面の特徴があります。
まず外見には「髪の毛がボサボサ(両親が床屋に行くのを放置している)」「洋服が汚い(洗濯されていない)」「あざやひっかき傷など、暴行を受けた跡がある」というもの。
そして性格的な特徴として「落ち着きがなくビクビクしている」「大人の顔色をうかがう」「年齢よりも大人びた態度をとる」逆に「年齢より極端に幼い行動をとる」などがあります。
虐待を受けている子どもは、大人の目を常に意識して行動しています。みずからの身を守るために落ちつきさを欠いたり、慎重になったりもします。また精神的に成長できないため、年齢にそぐわない態度を取ることもあります。
こうした虐待されている子どものポイントと照らし合わせて「本当に虐待がおこなわれているのか」見極めるのもひとつの方法。ただ過去の虐待の事例によっては、表向きは体裁よく整えていても、家庭内でひそかに虐待が進められていたケースもあるため、頭でっかちにならないことも大切です。
しょっちゅう泣き叫ぶような声が聴こえる・深夜に一人で廊下に立たされている・激しい両親の罵声がたびたび聞こえるなどがあれば、子どもの外見に目立った兆候が見られなくても、児童相談所に相談してよいレベルです。通報を迷っているあまり、ひとりの子どもの命が危険にさらされることの無いようにしましょう。
虐待が疑われるケース
- 髪の毛や洋服が汚い
- 大人の目をたえず気にしている
- 深夜や早朝に外やベランダに出されている
- 異常な鳴き声が聞こえる
- 何か物を叩きつける音がする
- 激しい罵声を耳にする
- 手や腕にあざがある
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虐待かな…?と思ったら、189に電話しよう
虐待が疑われるケース、虐待かよくわからないけれども危険が察知される場合には、専門の相談ダイヤルがあります。
全国どこからかけても大丈夫なのが189、イチハヤクと覚えておきましょう。189に電話すると自動的に機械が振り分けをおこない、最寄りの児童相談所に結び付けてくれます。わざわざ近くの児童相談所を選ぶ手間が省けるため、とても簡単です。
189は虐待されているのを確実に見た緊急性の高いときはもちろんのこと「虐待かな?」と疑わしいレベルでも十分対応してくれます。
また虐待している・あるいは虐待してしまいそうなほど子育てに悩んでいるママやパパがかけてもOKな番号です。
189は110番と同じくらい敷居が高い番号と思っている方が多いのですが、実はそれほどきつい設定にはなっていません。
「本当に虐待されているかどうかは、児童相談所のスタッフがおこなってくれる」ため、疑惑の段階で電話してしまうのももちろんOK。迷っていて本当に虐待が行われてしまうよりは数倍マシです。
匿名で電話できる、189の仕組み
また189に電話するときは匿名で電話することができます。そのため虐待疑惑の家族に対して、通報した人の名前や住所が知られてしまうことはまずありません。けれども同じ狭いエリアに住んでいると、たとえ匿名であっても電話してしまったことがいずれバレるのでは無いかと、ビクビクされる方も多いはず…。
虐待を受けている子どもと通報者の子どもが同学年だったり、ママ同士が顔見知りであったり、小さな町に住んでいてしょっちゅう顔を遭わせる関係であるとすると、例え虐待に近い言動を見たり聞いたりしても「面倒なご近所トラブルに発展するのだけは避けたい」と「通報しない立場」を選んでしまう方も少なからずいるはず…。
国民の義務になっている、通報の義務
実はあまり知られていないものの、虐待されている子を近所で見かけた場合、市町村の自治体や児童相談所に通知しなくてはならない義務は「法律」によって定められています。これは児童虐待の防止に関する法律の第五条に書かれています。
つまり法律で定められている限り、虐待を知ってしまったら通報しなければ「通告の義務に反する」ということ。違反した場合ペナルティがかけられるわけではないのですが、やはり「法律で決められている」となれば動き出さざるを得ないと感じる方も多いのではないでしょうか。
仕返しされたとき、どうすればいい?
ご近所で虐待疑惑が起こった場合、通報したあとの仕返しが怖くて夜も眠れないことがあります。もし何らかの手違いで虐待が疑われる家族から、児童相談所に通報したことがバレてしまったときどうすれば良いのでしょうか。
もし直接クレームを言われたのであれば、その場は相手の話を聞いて、その時点ではすみやかにお引き取りしてもらうこと。こちらが感情的にはむかってしまっては両親の逆鱗にふれ、かえって虐待されているお子さんが生命の危機に瀕してしまうこともあるからです。
まずは「相手の話を受け止めて、冷静に話を聴くこと」を念頭におきましょう。通報したことに関しては、あえてこちらから事実を伝える必要はありません。
虐待が疑われる家族が帰ったら、すみやかに警察署と学校(幼稚園)・189に連絡を入れます。報告したことが相手方に伝わってしまい、両親がとても怒っているという事実を関係機関に連絡しましょう。このようなご近所トラブルがあると「これ以上恥ずかしい思いはしたくない」「面倒な事件に手を焼きたくない」と自分の家庭内だけで処理してしまうことがあります。
もし家庭内で処分したとき、また新たな報復トラブルが起きたり、虐待を受けているお子さんに被害が加わることも考えられます。第三者機関と連携して、現在の状況をシェアしておくことが大切です。
多くの場合、仕返しはされない
虐待を通報した人の個人情報は厳重に扱われるため、虐待が疑われる家族にあなたの連絡が伝わることはまずあり得ません。過去の事例を見ても、実際に虐待を起こした夫婦がご近所に報復をした例はあまり見受けられないため「仕返しされるリスク」を必要以上に怖がる必要はありません。
むしろ通報しないことによって、幼い命や人権が無残に奪われてしまうケースもあります。「あのとき通報していたら…」と後悔しないためにも、間違ってても良いから1本電話を入れておくことが大切。あなたの勇気が、子どもの未来をかえてくれます。