パートナー・夫婦の変化

アルコール依存症の夫を改善に向かわせた体験談

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夫がアルコール依存症になる前兆

夫は、結婚した時からほぼ毎日仕事の帰りに飲みに行って帰ってくる酒豪でした。しょっちゅうお酒を飲みに行かれては家計を握る妻としては堪り兼ねてしまいますので、「たまには早く帰ってきて」とつい、夫に不満をぶつけていました。

しかし、そのような小言を言われると当然ですが、夫としては面白くありません。自分は、一家の大黒柱としてきちんと仕事をしているし、仕事での付き合いもあるのに小言を言われる筋合いはないと思っていたようです。

初期の頃は、1週間にお酒を飲む量を約束させていました。夫も約束に付き合って頑張っていましたが、徐々に約束した量よりも多く飲むようになりました。家でお酒を飲む場合は、ウイスキーがどのくらい減っているかバレないように水で薄めたりするなど、監視をしても無駄な状態でした。

そうなると、自己破壊衝動も強くなり私に対して八つ当たりがエスカレートしていきました。高校から大学までラグビーをやっていた夫は、がっちりした体格なのですが、次第に夫婦喧嘩になった時、暴力を振るうようにもなりました。

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アルコール依存が原因の心的外傷

夫がお酒を飲まないで仕事から帰ってきても、寒さで鼻が少し赤くなっているだけで「もしかして飲んでたのかも」と、不安に思うようになりました。

また、夫が階段でよろけて足を踏み外しただけでも「隠れてお酒を飲んでいたのかも」と疑ったりするようにもなりました。夫がくしゃみをした時は、「お酒を飲んでそのまま横になって寝たから風邪を引いたのかも」と何かにつけて夫が起こした行動に対して異常なほど疑うことが普通になっていました。

「飲んだんでしょ?」と、問い詰めたり怒ったりすると、開き直ってて怒ったり、お酒を飲み始めてしまうことも分かっていたので、ぐっと堪えるようにしていましたが、堪えられず気持ちが爆発してしまうことの方が多かったです。
こういった精神状態をPTSD(心的外傷)だということは、後から勉強するようになってから分かりました。しかし、夫の側からすると家族を不安にさせているというよりも、「信用されていない」という気持ちがあり面白くなかったと思います。子供は、まだ1歳になったばかりだったとはいっても、アダルトチルドレンになってしまう恐れもあったと思いますので、冷静に振り返ると恐ろしいです。

アルコール依存症の思考回路

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夫は、普段はとても優しくて頼りがいのある人です。でも、お酒が入ると気が大きくなってできない約束をしたりするので、結婚前から「お酒さえ控えてくれれば完璧なのに」と、思っていました。

気が付くと、「今度、新しくできたレストランに食べに行こう」とか「夏休みに海に行こう」と言ってくれてもしばらくすると、「忙しいから」と、断ることが多く周囲は慣れてしまいましたが、よく考えると夫は子供の頃から自分から何か提案しても実行したり、実行したことを継続するといった積み重ねができていなかったようです。

そのため、人生を積み重ねていくうちに、自分に自信が無くなってお酒に逃げるようになったのだと思います。また、夫の父親も酒癖が悪く、夫は幼少期から父親がお酒を飲んでいる様子を見て「自分はこうなりたくない」と子供ながらに思っていたようです。

しかし、自分が大人になると「あの時、お父さんは仕事で辛いことがあってお酒を飲んでいたんだろうな」と、父親を肯定するようになっていったと後々認めていました。一番酷い時は、「家族にお酒を飲むなって言われると、イライラして誰だってお酒を飲みたくなってしまいますよね」と、担当医に真剣な顔をして言っていた時です。このように、何につけてもお酒を飲む方へ、と理由付けしていることに気付かせるのは、非常に大変なことです。

アダルトチルドレンとは

アダルトチルドレンは、元々アルコール依存症の家庭で育った子供のことを指していました。現在は、家族がきちんと機能していないと子供がアダルトチルドレンになると言われています。

通常、子供は大人の社会から隔絶されています。子供の前で夫婦喧嘩をしない、問題のある親戚の話を子供の前でしないなど、健全な子供らしい世界を守ろうと子供を育てます。しかし、家族が機能不全となり、夫婦喧嘩が日常茶飯事となり、子供の前で感情を露わにしていると子供は常にアンテナを立てて不安を感じるようになります。

アダルトチルドレンは、大人になっても周囲の目を気にするため、自己決定ができなくなります。そのため、感情を調整することが上手くできず、うつ病や双極性障害になりやすいとされています。また、アルコール依存症の家庭は母親が子供のこともコントロールしてしまうため、子供が自立できなくなるとも言われています。

アルコール依存の夫を支える

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周囲からは、「離婚を視野に入れて、しばらく別居した方がいいんじゃないの」と、言われました。

ですが、毎日浴びるようにお酒を飲む夫を一人にしたら、もっと酷い飲み方になって死んでしまうのではないか、お酒のせいで仕事も失って夫の人生が駄目になってしまうんじゃないかと思い、私が夫を支えなければという思いを強く持っていました。それに、1歳になったばかりの子供もいましたので、夫のアルコール依存が改善できるものなら、家族仲良く幸せに暮らしたいという思いで、別居せずに堪えていました。夫が、タクシーで夜遅く帰ってきて、タクシー代がないと言ってきたら、慌ててお財布を持ってタクシー代を払ったり、居酒屋で喧嘩をしたと連絡が入ったら、謝りに行くなどしていました。

後になって分かったのですが、こういったことはむしろ夫の支えにはなっていませんでした。アルコール依存症から抜け出すチャンスの芽を摘んでいたようなものだったのです。夫を支えていたつもりが、増々アルコール依存度が高くなり、荒れた生活になっていきました。

共依存という共通点

アルコール依存症の家族には、ある共通点があると言われています。それは、自尊心の低さ、自信のなさです。

例えば、家族が健康で幸せでいてくれることが、自分の喜びであり幸せですという母親がいます。家族想いで良妻賢母な印象を受けますが、裏を返せば自分の人生を生きていないとも言えます。そのため、こういった人物はアルコール依存症を抱えている人の存在が必要になる、という実はお互いに依存している関係を築いているんです。

私は、妻として夫と子供の幸せを考えて頑張っていたと思っていましたが、自分の生きがいをアルコール依存症の夫に依存することで生きていたと知った時は愕然としました。

夫のことは、私が一番よく理解していると思っていましたが、病気のことは医者じゃないと分からないですよね。

しかし、当時の私は夫の一番の理解者は私だと思い込んで、献身的に尽くそうとしていました。アルコール依存症で病院に行った時、担当医から共依存について教えられた時は、「そんなこと言っても私がいないと夫は駄目になってしまうじゃないですか!」と、医師の話しを受け入れることができませんでした。それどころか、「先生よりも妻である私の方が、夫のアルコール依存症の症状については、詳しいんです!」と、夫だけでなく担当医までコントロールしようとしていたんです。

私が夫を支えてきたことが、夫のアルコール依存を支えているなんて信じられませんでした。

長年、夫のことを見てきた妻が支えてきたから、夫は何とか死なずに現状を保つことができていると変な自負と自信のせいで、夫の「お酒を止めよう」という気持ちにブレーキをかけさせていたとは思ってもみませんでした。

こういったことが分かるようになるまでには、何か月もかかりました。勉強会で、自分のことを言われているような話を聞いているうちに、だんだんと冷静に考えることができるようになったと思います。

アルコール依存という状況を理解することが大切

アルコール依存症とその家族の共依存について、ようやく理解することができてからは、やっと担当医の話を素直に聞くことができるようになりました。夫が仕事から帰ってきても以前のように「お酒を飲んでるのかしら」と心配しても意味がないことがようやくわかったのです。

お酒を止める・止めないは本人の意思でしか決めることができないことなので、周囲がどんなに頑張っても無意味なのです。最初は、夫のためにアルコール依存症の勉強会に参加していましたが、気が付くと「これって私のためだったんだ」と、理解するようになっていました。

夫は、私が体調を崩して子供と一緒に実家に帰った時に初めて「どうしよう」と、思ったようです。担当医とも真摯に向き合い「今日から、アルコール依存症を自分の問題として向き合います」と宣言してからは、少しずつ良い方へ変わっていきました。

子供に会いたい一心で、今までと180度態度が変わり、勉強会にも真面目に参加し始めました。

夫も私も、勉強して少しずつ気を付けることができるようになりました。

始めは、どうしてもお酒のことで「注意したい!」という気持ちの方が強くて、我慢するのが大変でした。でも、だんだん何がいけないのか、自分の言動や行動を客観的に見ることができるようになると、夫のことをコントロールしなくなりました。

そして、夫もコントロールされなくなったことで、自分の問題としてアルコール依存症を克服するために向き合うようになったんです。そこからようやく、スタート地点に立つことができたのです。

アルコール依存症の家庭は気付くことから

アルコール依存症の家庭は、1人の問題ではなく家族全員の問題です。支えている家族が、共依存していることに気付かなければ改善することはできません。

本人の意思でお酒を止めなければ意味がありませんので、コントロール下に置こうとしてはいけないのです。子供がある程度大きいと、アダルトチルドレンになってしまうなど、家族全体に悪影響を及ぼしますので、自分たちだけで解決しようとせずに、専門医を受診しましょう。

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