夫婦の束縛は必要?円満な家庭を目指すならこうしよう
夫婦間でのちょっとしたヤキモチは許せても、度を超えた干渉や束縛をされるのは困りますよね。
さらに妄想が入り混じった束縛になると、日常生活にも支障が出てくることも…。夫婦円満には束縛って必要なのでしょうか?
目次
夫婦の束縛はどの程度まで許される?
「束縛」。この言葉だけ見ると、なんだかとてもネガティブで、息苦しい感じがしませんか?
「束縛」の意味は、「制限を加えて行動の自由を奪うこと」(デジタル大辞泉)。相手を束縛する人は男女問わずおり、表面的には「相手のことが好きだから」とか「心配だから」という理由で行動を制限しようとします。
ここで、夫婦の束縛にありがちないくつかのケースについて、法的な観点も交えながらレベルごとにみていきましょう。
レベル1.一緒にいない間、誰とどこで何をするかなどの予定を聞く。⇒OK
民法752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。誰と、どこで、何をするか、何時に出て何時に帰るか…といったことを相手に知らせることは、共同生活を行う上でのマナーといえます。ですからこれはOKです。
ただし、相手の行動を管理したり支配しようとする、暴言を吐くなどが伴うと「モラハラ」になるのでご注意を。
レベル2.相手のケータイ(スマホ)やPCを勝手にチェックする。⇒NG
相手の許可を得ず無断でチェックした場合、たとえ夫婦間でも「プライバシーの侵害」として民法上の不法行為になります。ケータイでやりとりされたメールなどは不貞の証拠として裁判で採用されることもありますが、SNSに勝手にログインをした場合などは逆に損害賠償請求される可能性もあります。
ですからこのケースは、基本的にはNG。明確な目的があって行う場合も、弁護士に相談の上ということになります。
レベル3.電話やメール、LINEなどの連絡(返信)が少しでも遅れると怒る。⇒NG
夫婦間の連絡の仕方や頻度については、きちんと話し合っておくのがベターです。人にはいろいろな都合があるので、すぐに出られない・連絡ができないのは許容範囲のはず。
問題なのは、都合を無視して少しの時間も待てずに怒る、何度もしつこく連絡するといったことが日常的に行われている場合。理由を伝えても、「返事ができないのはやましいことがあるからだろう」などと一方的に怒り出すのは、完全に「NG」です。
レベル4.自分以外の異性と一緒にいることを禁止する。⇒NG
仕事関係や友人関係で異性と会うことは法的には何ら問題ないため、たとえ配偶者であっても禁止することはできません。
でも、自分のいないところでパートナーが異性と会うのは、なんとなくイヤ…という気持ちを抱く人も多いでしょう。そのような場合は、会う目的や頻度を考慮して、夫婦間で納得できるルールを決めておくことが大切です。
禁止はNGですが、「2人きりはちょっとイヤだな~」など気持ちを伝えてみては。
レベル5. 同性か異性かを問わず、自分以外の人とメールや電話、会うことを嫌がる・禁止する。⇒NG
モラハラをする人の特徴の1つに、相手の行動を監視し、禁止するなどの「束縛」があります。買い物や通院といった日常的なことまでも制限をかけてくるのがモラハラです。
モラハラを受けると、人としての尊厳が傷つけられ、健全な夫婦生活を送ることができなくなります。モラハラによって結婚生活が破たんしたと証明されれば離婚理由となり、損害賠償請求訴訟や離婚訴訟に発展することもあります。
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束縛夫と放任夫の問題点
「俺の許可なく外出するな!」と言い放つ束縛夫と、朝帰りしても何も言わない放任夫。これは例えが極端ですが、「どちらがよりいい夫」というわけではなく、どちらにも問題がありそうです。束縛夫と放任夫、それぞれどんな問題があるのでしょうか。
束縛する夫は何が問題?
束縛したがる夫に共通した心理的背景に「不安感」があるといいます。自分に自信がなく、過去のトラウマや複雑な家庭環境などにより人への不信感があったり、自己評価の低さから「自分は妻に捨てられるのではないか」という不安感を潜在的に抱えているようです。
以下は、束縛の内容の一例です。
- 妻が仕事に出るのを嫌がる
- スカートをはく、化粧をするなど女性らしいことをするのを嫌がる
- 夫以外の人に笑顔を向けると不機嫌になる
- 電話帳から男性の番号やアドレスをすべて消去させる
- 病院の医師やマッサージの担当は女性のみと言われる
- 外出時は所要時間や帰宅時間を指定され、少しでも遅れると暴言を吐かれる
このように束縛され続けた妻は、どうなってしまうのでしょうか。今度は妻の側の影響をみていきましょう。
- 友人や親族との交流ができなくなる
- 自分に自信が持てなくなる
- 常に息苦しさを感じる・イライラする
- 無気力になる
- 精神的に追い詰められ、うつ、対人恐怖、不眠、震え、動悸、頭痛などさまざまな精神的・肉体的な症状が発症する。
束縛が強い夫はモラハラ傾向も強いといえるので、妻は自尊心を傷つけられがちです。
また「束縛は愛情の証」と捉えられがちで、束縛をする方もされる方も、それが人の自由な意思を踏みにじるものだと自覚しにくいという特徴もあります。よって、長期にわたってじわじわと束縛されることとで、気づいた時に抱えきれないほどの大きな問題になってしまっていた…ということもあります。
放任する夫は何が問題?
一方、すべて自分の自由にさせてくれる「放任夫」は、とても気楽で器が大きい人のような気がします。妻を全面的に信じてくれていると感じる人もいるでしょう。でも、本当にメリットだけなのでしょうか。
ここで、興味深いアンケート結果をご紹介しましょう。野村不動産アーバンネットが50代・60代の夫婦を対象に行ったアンケートでは、「幸福度が低い夫婦」が行っていることのランキング第1位が「お互い干渉しない」、第2位が「相手を束縛しない」でした。
このアンケートは中高年を対象にしていますが、20代~40代の夫婦には当てはまらないとは言い切れません。夫婦はお互いにコミュニケーションをとって、ある程度言いたいことをいい、適度にコミットする(積極的に関わる)ことが大切です。「私たちはお互いに干渉も束縛もしない夫婦だから」と割り切って放置してしまうと、逆に幸福度は下がってしまうようです。
また、こんな例もあります。
- 妻に干渉せず好きにさせてくれる夫だと思っていたら、夫の方が浮気していた。
- 夫が妻の行動にあまりにも興味を示さないので、愛されていないようで悲しい。
- お互いの行動に干渉しないあまり一緒に過ごす時間が少なく、夫婦の意味が見いだせない。
こんなことにならないように、放置するのではなく、尊重する。干渉しないのではなく、コミットする。そんな姿勢が夫婦には必要なのかもしれません。
束縛するパートナーにはこれが有効
では、「束縛する夫とはすぐ離婚!」が正しいのでしょうか?実際には、愛情はあるし、基本的には悪い人じゃないし、子どももいるし…というように、そう簡単なことではありませんよね。何か有効な手立てはないのでしょうか。
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束縛するパートナーへの対処法
- 自分の意見をはっきり言う
「夫婦はお互いに協力して生活しなくてはならない」と民法にもはっきり記されています。一方的に束縛されるのは「協力」とはいえません。束縛はツライ、苦しいということをはっきり伝えてみましょう。 - 愛情を伝える・褒める
束縛は自己評価の低さや見捨てられることへの不安が原因になっていることが多々あります。「あなたのことが大好きで結婚したんだよ」「さすがあなたね!」「こんなことができるなんてすごい!」と、多少オーバーでも伝えてみてください。だんだんと自信がついて、束縛もやわらぐかもしれません。 - 相談する
自分だけでは解決できないと感じたら、信頼できる人に相談することも大切です。親や友人、または専門機関でカウンセリングを受けるのも1つの手です。なぜ自分は束縛するパートナーと一緒に居続けるのか、束縛する本当の理由は何なのかといったことを知ることは、これからの夫婦関係を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
これらは、束縛するパートナーとの関係を改善し、円満に暮らしていきたいと考える場合の対処法です。改善したい、うまくやっていきたいと思えるうちは、それほどひどい束縛ではないともいえます。
「夫婦間に束縛は必要か?」という問題に正解はありませんが、お互いが笑顔でいられる束縛であればアリ、なのかもしれません。どちらかが苦痛に感じ始めたら、その束縛は「NG」です。行き過ぎると人の尊厳を失わせ、心身ともにダメージを与える行為だということを忘れずに、尊重し合える夫婦でいられるといいですね。
■参考
・『マンガでまるっとわかる! はじめての心理学大全』ゆうきゆう・監修 西東社
・野村不動産アーバンネット株式会社 「定年退職後の夫婦の生活」意識調査
http://www.nomura-un.co.jp/news/pdf/20160315.pdf