婚前契約書とは?その効力は?
最近、「婚前契約書」という言葉を耳にする機会が増えました。「婚前契約書」とは結婚生活における様々なトラブルを回避するために、夫婦の間での決まりを設ける契約書のことです。
具体的にどのような決め事が設けられるかというと、家事や育児に対する決まりや生活費の使い方、そして親の世話に関する決まり事などが一般的なものとなっています。
またこのような決まりの他にも、離婚の条件や休日の過ごし方に関する決まりを設ける夫婦もおり、結婚生活に何を求めるかによってその内容は大きく異なっています。この「婚前契約書」には夫婦の同意があればどのような決まりでも組み込むことができます。そのため独特の「婚前契約書」が出来上がることもありますが、そのようなものが結婚生活をスムーズに送る鍵となるケースも多々あるのです。
当サイトで簡易調査をしてみましたが、日本でも婚前契約書を活用している人はいるようでした。
※2017年8月調べ N数100名
結婚時に婚前契約書を交わした? | ||
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1位 | 交わしていない | 94% |
2位 | 交わした | 3% |
3位 | 類似したものを交わした | 3% |
2017年で何かしらの契約を交わしている人は6%でした。この数字は今後伸びていく可能性もあると思います。
この「婚前契約書」にはいくつかの種類があります。そして選択する種類によって法的効力が異なるために、安易な決め事を組み込むことがないよう細心の注意を払うべきです。ではまず「婚前契約書」の種類と、それぞれの効力について見ていくことにしましょう。
目次
婚前契約書の種類と一般的な効力
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1.「覚書」
恐らく一番多い「婚前契約書」は「覚書」と呼ばれる形式のものでしょう。これは夫婦の間で作成された、いわゆる証拠文書です。それでも署名押印がしてあれば事実証明に関する法律文書として取り扱われるために、「婚前契約書」に記載された決まり事を破ると罰せられることもあります。
しかし「婚前契約書」の中では法的効力が比較的弱く、そのため決まり事を守るための真剣な契約としてはあまりお勧めできません。それでも簡単に作成できるというメリットがあり、多くの夫婦から高い人気を得ています。ちなみに「覚書」は国や地方公共団体が作成したものではないために、「公文書」ではなく、「私文書」に分類されます。
2.法律に沿って作成した「婚前契約書」
先に述べた「覚書」が夫婦間で作成された「私文書」であるのに対し、こちらの「契約書」は法律を考慮して作成されたものとなります。例えば財産分与に関する決まりは、法律の中で定められています。
しかし「覚書」の中で夫婦間でその取り分を決めてしまうと、後々問題が生じることもあります。そのようなことを考慮し、法律で定められている財産配分にのっとった仕方で「婚前契約書」を作成すれば、夫婦のどちらかの考えが後で変わったとしても問題が生じることはないのです。
このような「婚前契約書」はお金をかけずに作成できるものであり、尚且つ法に基づいて決定がなされるために、お勧めできるものです。
3.公証人により作成された「公正証書」
「婚前契約書」は公証役場で作成することができます。そこでは公証人がこの契約書を作成することになるために、「公文書」となります。そのため上記で取り上げた2つの「婚前契約書」よりも作成は複雑であり、尚且つ公証人手数料などが必要となります。
しかし「公文書」であるために法的効力は非常に強く、基本的に契約違反に対する処罰が可能です。
4.「夫婦財産契約」
民法755条には「夫婦財産契約」に関する記述があり、これにのっとった形で作成されるのが「夫婦財産契約書」です。これは結婚前にのみ作成することのできる契約書です。
またこの契約は財産に関する取り決めのみで、原則として届出後は内容を変更することができません。また作成にあたり登記費用が必要となり、法務局に登記することになるために「公文書」の扱いとなります。
このように「婚前契約書」には4種類のものが存在します。夫婦間での決まり事をきちんと守り、それができなかった場合はそれ相応の対処が必要であると感じる場合、3つ目と4つ目の「公文書」による「婚前契約書」の作成がお勧めです。
また作成にかかる費用が必要ないにも関わらず、そこそこ法的効力のある「婚前契約書」を作りたいという夫婦は、2つ目のものがお勧めです。
1つ目のような「婚前契約書」でも、夫婦間での決まり事を守らなければならないという自覚を植え付けてくれますので、作成することには十分な意味があります。
では実際のところ、この「婚前契約書」を作っている夫婦と、そうでない夫婦の間にはどのような違いが生じてくるのでしょうか?外国で作成されている「婚前契約書」の例から、その点について見ていくことにしましょう。
海外では常識ともなりつつある婚前契約書
冒頭でも述べましたが、これまで日本ではあまり「婚前契約書」という言葉を耳にしなかったかもしれません。
しかし海外では「婚前契約書」を作成することが常識となっている国もあります。中でもアメリカとイギリスでは多くの人が「婚前契約書」を作成しています。「婚前契約書」は英語で「プレナップ」と呼ばれています。もしかするとこの名前を聞いたことのある人がおられるかもしれません。
まず有名なプロゴルファー、タイガー・ウッズさんの例を見てみましょう。
彼は妻のエリンさんとの間で「婚姻が10年継続したら2000万ドル支払う」という「婚前契約書」を作成していました。しかし残念なことに、結婚5年目で彼は他の女性に目を向けるようになります。このとき妻のエリンさんとは別居中であり、離婚は目前であると誰もが考えていました。
しかし妻のエリンさんは残り5年をタイガー・ウッズさんと過ごすことで莫大なお金を入手できることを考慮し、離婚を踏みとどまります。少ししっくりこないかもしれませんが、「婚前契約書」のおかげでタイガー・ウッズさんは結婚生活を長続きさせることができたのです。
また逆に「婚前契約書」を作成しなかったために離婚裁判が長引いてしまうこともあります。そのような状況を経験したのが有名な映画俳優、ジョニー・デップさんです。
彼は離婚した奥さんとの間での財産分与のことで意見が合わず、そのことで神経を擦り減らせています。彼の財産は莫大であることから、離婚した奥さんが請求する財産の額も高額であり、それにジョニー・デップさんが首を縦に振らないという状況が続いていたのです。
また有名な音楽家、ポール・マッカートニーさんも「婚前契約書」を作成せずに離婚したセレブの一人です。彼は妻のヘザーさんとの結婚生活をたったの4年間しか続けることができませんでした。
しかし離婚した奥さんへの慰謝料はなんと日本円で約48億円と高額だったのです。また彼は当初慰謝料として約30億円を奥さんに支払うことを提案しました。しかし奥さんがそれを了承せず、結果的に48億円に膨れ上がってしまったのです。
このように外国にはいわゆるセレブと呼ばれる大富豪がたくさん存在します。そしてこれらのセレブが結婚し、その後離婚した場合には必ずといっていいほど財産分与のことで裁判が長引きます。こうした状況を避けるために、外国に住むセレブたちは「婚前契約書」を作成するのです。中には専属の弁護士を雇っているセレブもおり、そのような人は結婚前に必ずといっていいほど「婚前契約書」を作成することを弁護士に勧められています。
もちろん莫大な資産を有していなくても、離婚に至った場合は財産分与でもめることが考えられます。またお金の使い方に関する基準は夫婦といえども異なるために、この点に関する決まりをあらかじめ「婚前契約書」の中に組み込んでおくのはよいことです。
もちろん結婚前に何らかのトラブルに備えて契約書を作成するというのはあまり気の進まないことかもしれません。
しかしこうした準備が物事をスムーズに運でくれるために、いざというときのための備えとして「婚前契約書」を作成するのはふさわしいことといえます。
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婚前契約書の作成やメリット、デメリットを考える
結婚を控えたカップルがこれからの生活の中での決まり事を作り、それを契約書としたものが「婚前契約書」です。この契約書の作成は海外では一般的となっているものの、ここ日本ではあまり聞きなれない言葉でした。
しかし最近では日本でも「婚前契約書」を作成するカップルが増えています。ではこの契約書はどのようにして作成されるのかを、まずは見ていきましょう。
婚前契約書を結婚前に作成する場合
「婚前契約書」の名前が示すように、この契約書は結婚前に作成されるのが一般的です。多くのカップルは結婚後のお金の使い方や老後の親に世話に関する決まり事、そして離婚後の財産の配分などについて書き記します。
「婚前契約書」は大きく分けると4つに分類されます。そのうちの2つが「私文書」と呼ばれるもので、国や地方自治体からの文書ではなく、夫婦間でのみ交わされた約束事という部類に相当します。
つまり自分たちで用意した用紙に決まり事を書き記し、署名捺印をすれば出来上がるのです。法的な効力はそれほど高くはないものの、署名捺印があるために夫婦双方の合意のもとに決められた約束事という位置づけになります。結婚後に変更を加えることができるものの、お互いの同意がなければそれは不可能です。そのためどのような決まりを作るかは慎重に考慮しなければなりません。
またその他の2つは「公正証書」と「夫婦財産契約」になるわけですが、これらは「公文書」になります。まず「公正証書」ですが、これは公証役場で手続きを行い、作成するものです。費用としては約10万円程が相場といわれていますが、記載する内容によって異なってきます。
また「夫婦財産契約書」ですが、これは財産についての取り決めであり、尚且つ結婚前にしか作成することができません。また契約書を法務局に登記すると「公文書」となり、その際は登記費が必要となります。また届出後は内容変更が認められないのが原則です。
婚前契約書を結婚後に作成する場合
「婚前契約書」の名前からすると、「結婚後にこの契約書を作ることは不可能ではないのか?」と思われるかもしれません。実のところ、そのようなことはありません。結婚後でも作成することができるのです。当然のことながら夫と妻の性格や考え方は異なるために、生活していくにつれて様々な決まりが必要であると感じることがあるかもしれません。そのようなとき、この「婚前契約書」を作成することができるのです。
しかし先にも考えたように、「夫婦財産契約」のように結婚前にしか作成することのできないものもあるために、この点はしっかりと明記しておかなければなりません。
結婚契約書のメリット、デメリット
「あのときこういったじゃないか!」「結婚した当初に交わした約束と違う!」といったようなセリフを聞いたことのある人は少なくないはずです。もちろんドラマや映画の世界での話でしたら笑えるかもしれませんが、このようなセリフが自分の家庭内で飛び交うような状況はあまり好ましくありません。
恐らく多くの場合、こうした状況が生じるのは結婚前に行った約束を忘れてしまったからではなく、それを守ることが苦に感じられるようになり、夫婦のどちらかが故意に約束を破っているからでしょう。
民法第754条には「夫婦間でした契約は婚姻中、いつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができる」とあるために、口約束したことは変更されることが法律によって許されているのです。こうした状況を避けるためには、「婚前契約書」を作成するべきです。
この契約書を持っていれば約束事を守らなければならず、そうできなかったときはそれなりの処置が取られます。もちろん先に考慮したように、法的効力が強いものと、そうでないものとが存在します。どちらのものを作成するにせよ、約束事を守らなければならないという自覚が芽生えますので、「婚前契約書」には大きな意味があるといえます。
また万が一、夫婦が離婚に至った場合、財産分与に関する決まりを「婚前契約書」内に設けていれば、離婚手続きが長引くことはないでしょう。多くの場合、離婚がスムーズにいかないケースは親権に関することと、財産分与に関することでもめてしまうからです。そのうちの一つを「婚前契約書」で解決できれば、事はスムーズに流れるはずです。
「婚前契約書」にはデメリットも伴います。場合によっては夫婦のどちらかが契約内容を変更したいと感じることがあるかもしれません。しかし基本的には契約書にのっとって物事を進めていかなければならないために、双方の同意がなければ契約内容を変更できないことがあります。
また「夫婦財産契約」のように、内容が変更できないものも存在します。加えて「公文書」にあたるものは作成にあたり費用を支払う必要があります。それらは決して安いものではないために、この点もデメリットの一つとして考えることができます。
結婚契約書の内容を破棄できる?
ここでもう一度、民法第754条について考慮してみましょう。それは「夫婦間でした契約は婚姻中、いつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができる」というものです。結婚前の夫婦は戸籍上、他人です。そのため他人同士の間で交わされた契約は守る義務があります。
しかし結婚後は夫婦となるわけですから、この民法第754条を当てはめると結婚後の「婚前契約書」は破棄できることになります。もちろん契約ですから、交わされたものは守る義務があります。それでも「私文書」によって作られたものは法的効力が弱いこともあり、破棄されてしまうことがあります。しかし特例もあります。
例えば夫婦のどちらかの暴力や扶養放棄、そして浮気などが原因で別居している場合や、コミュニケーションが取れないほど夫婦仲が悪化している場合などは、この二人が他人同様とみなされます。そのような状況では民法第754条が適用されず、「婚前契約書」の内容を守ることが義務づけられます。特に先に述べた暴力、扶養放棄、そして浮気に関する決まりは順守されるべき事柄としてみなされており、簡単に破棄できるものとはなっていません。そしてこれまで何度も述べてきたように、「夫婦財産契約」に関しては内容変更はできません。
また契約内容の破棄は、夫婦間に亀裂が生じたときにのみリクエストされるものではありません。円満な夫婦の間でも、「この決まりはもう必要ないね」といった感じで取り消したいと感じるものもあるはずです。上記でも少し触れましたが、このようなケースでは夫婦双方の同意のもと、内容変更や内容破棄が可能となります。
このように「婚前契約書」は、安易に作成されるものではありません。確かに夫婦の間で交わされた契約は夫婦円満をもたらす上で助けとなります。
しかし基本的には契約内容を守ることが義務であるために、法の目をかいくぐって内容を頻繁に変更したり、破棄したりすることは望ましくないのです。付き合っている相手から、「婚前契約書を作ったら結婚してあげる」といわれ、相手の記した条件を対して考慮せずに署名捺印してしまう人もいます。
このようなことは後々大きなトラブルに発展することがありますので、「婚前契約書」を作成するときは必ずその内容に注意深く目を通すようにします。納得のいかない条件が記されていた場合、署名捺印する前にもう一度話し合いの場を設けることがふさわしいでしょう。
結婚前に結婚後のトラブルについて考えつつ、この契約書を作成するのは気が進まないかもしれません。しかし慎重に考慮された「婚前契約書」は後々様々な問題点を容易に解決するための助けとなりますので、この点をしっかりと思いに留めておくべきです。